エタノールに、アロマで使われる精油(エッセンシャルオイル)をくわえることで、真菌(カビ)の増殖を抑える防カビスプレーを作ることができます。
前回は、4つの精油(ティーツリー、クローブ、ペパーミント、グレープフルーツ)を用いたレシピをご紹介しました。
カビシーズン到来、自家製アロマ防カビ・スプレーお勧めレシピ ☆彡 防カビのアロマ活用術(その1)
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では、なぜ、これら材料で作った自家製アロマスプレーに制真菌作用が期待できるのでしょうか?
今回は精油の抗真菌作用に関するお話です。
目次
そもそも『抗真菌』とは?

まずは『抗菌』、『殺菌』、『滅菌』、『除菌』、『静菌』の言葉の意味の違いから考えてみます。
これらの語彙は、お掃除本でよく登場するですが、意味は、まったく同じではありません。
作図すると、上のようなイメージです。
『殺菌』は、生きている菌の数自体を減少させること。
『滅菌』は無菌状態にすること。
『除菌』は菌を除去すること。
『静菌』は、厳密には、菌の増殖を停止することをいいますが、現在では、菌の増殖を抑えること(完全に増殖が停止していない場合も)も、『静菌』という言葉が使われることが多いです。[br num=”1″]
そして、『抗菌』はこれらをすべて内包した意味合いであり、『抗真菌』とは、抗菌の真菌版の意味だと考えてください。
精油と真菌の実験結果
公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)の公式サイトでは、アロマの研究・調査に関する記事が掲載されており、この表は原著論文(アロマテラピー学雑誌、Vol.12, No.1, 66-78, 2012原著論文『20種の精油の微生物に対する制菌効果』)から引用をもとに作表作図したものです。

今回は掃除分野での精油利用なので、おもに表中のクロカビやユーロチウム・シバリエリに効果がある真菌に注目します。
クラドスポリウム
カビのなかには、一般的に、黒カビ、青カビ、赤カビなど見た目の色で呼ばれ種類もありますが、同じような色であっても同種のカビとは限らず多くの種類があります。
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クラドスポリウムは、コロニーの色はオリーブような色味ですが、屋内に付着したカビを肉眼で見たときは黒っぽく見えるので、一般的には『黒カビ』と呼ばれることが多く、浴室やトイレの壁、あるいはタイルの目地、エアコンや加湿器の内部、洗濯機洗濯槽内部など、水周りに生えるカビの代表格です。
ユーロチウム・シバリエリ
いわゆる『カワキコウジカビ』です。和名からも想像がつくように、やや感想した環境を好むカビで、コロニーの色は黄色や赤褐色。乾燥穀類などの食品にも生えるほか、畳、絨毯、皮製品、衣類、本、カメラのレンズなどにも生え、カビ臭い書籍の臭いの元でもあります。
双方に効果があった精油
表を確認すると、双方の真菌に効果があった精油は、ティーツリー、シナモン、タイム、ラベンダー、フェンネル、そして、ユーカリラ・ディアータですね。
抗真菌作用を持つ成分
抗真菌作用を持つ成分は、以下のとおりです。
●フェノール類
●フェノールエーテル類
●モノテルペンアルコール類
●アルデヒド類
実際は、どれぐらいの割合で、抗真菌作用を持つ成分を含んでいるのかで、成分分類だけで単純に真菌作用の強さを比べることはできませんが、もっとも強力なのはフェノール類、それと大差なく強いのがモノテルペンアルコール類といわれています。
おもな成分分類については過去記事にまとめていますので、興味がある方は、そちらをごらんください。
さて、このことを踏まえたうえで、実験結果で効果があったティーツリー、シナモン、タイム、ラベンダー、フェンネル、そして、ユーカリラ・ディアータの成分を眺めてみましょう。
効果があった精油の成分
精油の成分比率は、資料によって数値に違いがあります。
今回は、『アロマティック・アルケミー エッセンシャルオイルのブレンド教本』バーグ文子著に準拠した比率を掲載しています。
>>参考文献:『アロマティック・アルケミー エッセンシャルオイルのブレンド教本』バーグ文子著
ティーツリー

>>さまざまなティーツリー(ティートリー、ティートゥリー)精油
タイム

精油のなかには、同じ植物から抽出しても、生息地域の気候、風土、土壌の質などから成分が違ってしまうものがあります。
生物学上は、同一の植物であっても、抽出される精油の成分構成が違っていると、同じ種類の精油として扱うわけにはいきません。
成分の構成、比率が違うということは、精油の作用、効果が違ってしまうからです。そのため、『ケモタイプ(CT)』という区分があります。
真菌に強い作用を持つタイム精油のCTはチモール。他にもタイム精油には、『ゲラニオール』、『ツヤノール』、『パラシメン』、『リナロール』というCTがあります。
すべて成分構成が違うので、用途目的に応じて使い分ける必要があり、注意が必要です。
シナモン

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ラベンダー

ユーカリラディータ

たとえば、スイートオレンジ精油とビターオレンジ精油がイメージしやすいと思うのですが、両者は異なる種類のオレンジから抽出される精油です。
CTのように、同じ植物の自然条件違いではなく、『オレンジ』という共通点であっても、異なる種類の植物から抽出された精油ですから、成分構成も、作用効果も違っています。
ユーカリも非常に種類が多い植物であり、ユーカリ精油には、『ユーカリ・グルブス(ブルーガム)』、『ユーカリ・ラディアータ』、『ユーカリ・レモン』、『ユーカリ・ブルーマリー』などの種類があり、さらに『ユーカリ・ブルーマリー』のようにCTを持つものもあります。
精油選びのまとめ

効果があった精油は、3~4割以上の高い割合で、フェノール類や、モノテルペンアルコール類の成分を含んでいることがわかります。
ユーカリラ・ディアータも、モノテルペンアルコール類を含んでいますが、多くても十数%と、他の4つ精油に比べると、抗真菌作用が弱いため、実験結果も、他の4つの精油に及ばなかったわけです。
つまり、防カビ目的のスプレーを作ろうと思うのなら、抗菌作用の高い成分を含んだ精油を利用することが条件の一つとなるわけですね。
フェノール類やモノテルペンアルコール類を高い割合で含んだ精油は、これ以外にも多くの種類がありますから、これらとは別の精油を使っても、高い抗真菌性を持つ精油を使えば防カビスプレーが作れることになります。
自家製アロマ防カビスプレーに限らず、フェイシャルでも、リラックスでも、同じような目的なのに、異なる精油を使ったレシピが、たくさん生まれる理由のひとつは、同様の作用と効果が期待できる成分を含んだ精油に、たくさんの種類があるからなのです。他にも、理由はあるのですが、まずは、この点を抑えましょう。

今回は、このあたりにまでにして、次回は、前回の記事であげたレシピで登場した精油、グレープフルーツ(グレープフルーツホワイト)、ティーツリー、ペパーミント、クローブについて書きたいと思います。
グレープフルーツは、モノテルペン炭化水素類が~98%を占め、抗真菌作用を持つアルデヒド類は2%ほどの割合しかありません。つまり、効果が期待できるほどの抗真菌作用を持つ精油とはいえないのです。
それなのに、なぜ使われているかというと・・・・・というようなお話を書く予定です。
興味がある方は、次の記事のアップを楽しみにしていてくださいね(*^_^*)。
参考文献など
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