前回、防カビのアロマ活用術(その2)では、どんな成分を含んだ精油(エッセンシャルオイル)に、抗真菌作用があるのかを、公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)が公開している研究結果を例に記事にしました。

防カビに使われる精油(エッセンシャルオイル)の共通点 ☆彡 防カビのアロマ活用術(その2)

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今回は防カビのアロマ活用術(その1)でご紹介した自家製アロマ防カビスプレーのレシピに登場する4つの精油(ティーツリー、クローブ、ペパーミント、グレープフルーツ)についてのお話です。

1防カビレシピ図

 

抗真菌作用が期待できる精油(エッセンシャルオイル)

 

前回の記事で書いたように、抗真菌作用に有用な成分は、『フェノール類』、『モノテルペンアルコール類』『フェノールエーテル類』、『アルデヒド類』です。

こと、フェノール類とモノテルペンアルコール類の抗真菌効果は高く、これらの割合が高い精油が、抗真菌用途に使われます。

 

真菌の増殖を抑制するために、よく用いられる代表的な精油

抗真菌効果の高い精油

クローブ、シナモン、ゼラウヌム、タイム、ティートゥリー、パチューリ、パルマローザ、ペパーミント、ミルラ、ラヴェンダー、レモングラス、レモンユーカリプタス、ローズマリーなど

レシピの4つの精油のうち、3つは、抗真菌作用に優れた精油であることが分かります。
それでは、これら3つの精油の成分を確認してみます。

どれも、フェノール類やモノテルペンアルコール類の成分割合が高いものだとわかると思います。

 

抗真菌作用が期待できる3つの精油の成分

精油成分の割合は、書籍によっても、どんなデータを根拠にするかによって違いが生じますが、ここでは『アロマティック・アルケミー エッセンシャルオイルのブレンド教本』バーグ文子著に準拠した割合です。

>>参考文献:『アロマティック・アルケミー エッセンシャルオイルのブレンド教本』バーグ文子著

 

ティーツリー

ティーツリー成分

>>さまざまなティーツリー(ティートリー、ティートゥリー)精油

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ペパーミント

ペパーミント成分

>>さまざまなペパーミント精油

クローブ

クローブ成分

>>さまざまなクローブ精油

 

このなかで、もっとも抗真菌作用が強いのは、フェノール類のオイゲーノールを80%以上も含むクローブ精油です。

ここで思い出されるのが、前回の記事の実験結果で、屈指の抗真菌効果を発揮したシナモン精油の成分ですね。

シナモン成分

>>さまざまなシナモン精油

 

カレーに欠かせないスパイスのひとつとして知られるクローブ。

シナモンもスパイスであり、お菓子のイメージが強い方も多いと思います。

もともと、スパイスは、食品などの防腐剤として使われてきた歴史があり、シナモンもクローブも、保存対象物がカビや雑菌におかされ、傷むのを防ぐ役割を果たしてきました。

両者の成分を見てみると、フェノール類(オイゲノール)が8割方が占めていますね。

オイゲノールは鎮痛作用にも優れ、殺菌力も高く、局部麻酔作用もあるため、中世のヨーロッパでは感染症の防止に使われたり、アジアではクローブの蕾を噛むことで歯痛を和らげる薬に使われてきた歴史もあります。

クローブ写真

今でも、オイゲノールは、精油のほかにも、香水、さまざまな製品の香料、殺菌剤、麻酔作用を持つ薬など、幅広い工業分野で利用されています。

アロマという限られた世界の香料ではないので、国家間レベルの香料規格団体などでも取り扱いや安全性のガイドラインが策定されています。

クローブやシナモンは、掃除用途には、非常に優秀な精油ともいえるのですが、薬品でも漢方でも合成洗剤でも、強い効果を持つ成分は、決まって、取り扱いに注意があるもの。精油とて、例外ではありません。

フェノール類の成分を高い割合で含み、抗菌、抗ウィルス、抗真菌といった効果も高い精油は、肌への刺激も強く、低濃度で使うことが前提の精油です。

クローブの場合、マッサージや防虫スプレーなど、肌に使う場合は、他の精油とブレンドして、1%までの程度の濃度で使われます。

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シナモンは、フェノール類のほかにも、アルデヒド類、フェノールエーテル類など、肌への刺激が無茶強の成分公正になっていますから、直接、肌に塗るような用途には避けたい精油のひとつです。

 

グレープフルーツがどうして飛び込んでいるのか?

3-1防カビレシピ図

>>お見本レシピ出典;『もっと身近にアロマセラピー 森広子著』

図は、防カビのアロマ活用術(その1)でご紹介した自家製アロマ防カビスプレーのレシピ。

突如、グレープフルーツが飛び込んでいるように見えますが、ブレンドされている精油のグループ、相性を確認すると、理由がわかります。

 

香りの相性とブレンド

精油ブレンド相性相関図

香りには相性があり、図は相性の相関性を作図したものです。
同じグループ内にある精油、隣接するグループの精油の香りは相性がよいです。
そのため、複数の種類の精油をブレンドするときは、同一グループ、隣り合うグループに属する精油も意識されます。

精油は用途が限定されている場合は、シングル(単体)で使うほうがよい場合もあります。
たとえば、真菌の中でも、病原菌であるカンジダ菌や白癬菌(水虫)への抗真菌作用を期待する場合は、ティーツリーをブレンドするより、単独で用いたほうがよいです。

 

>>参考文献:『誰も教えてくれなかった精油のブレンド学』中村あづさアネルズ著
(ティーツリーの章に、ティーツリーを単独で使う事例の記載があります)

ティーツリー写真

いくら抗真菌作用が強くても、人の肌に塗りこむような用途では、フェノール類のクローブやシナモンは皮膚刺激が強く、使用に向きません。

ティーツリーはラベンダーと並んで、局部、少量に限り、原液を肌につけられる安全性の高い精油。
カンジダ菌や白癬菌に対しては、抗真菌以外の作用を期待しているわけでもありません。
香を楽しむというよりも、作用優先。そのため、抗真菌効果も得られ、なおかつ、ラベンダーと並んで安全性が高いティーツリーをシングルで使うほうが良いことになります。

ただ、多くの場合、精油はブレンドして使うことが好まれます。
ブレンドして使うことで、シングルで使うよりも、多くの作用効果を期待できますし、自分好みの香りに調整することもできるからです。

今回取り上げている防カビスプレーの噴射対象は人ではなく物ですね。

抗真菌への高い作用の精油を用いるのが望ましいですから、掃除では、よく使われる精油であるクローブが用いられています。

ただ、グローブは、ティーツリーとは対照的に、低濃度で使うことが義務付けられている精油です。もちろん、人の肌に使うのよりは、希釈濃度は高めにできますが、掃除でも、1.5、多くても2%程度の濃度で抑えたいため、100mlに対してシングルで80滴(0.05×80滴=4ml)なんて使い方はできません。

そのため、防カビ剤に、屈指の抗真菌効果を発揮するをクローブを使うというレシピを考えると、必然的にブレンドを考慮することになります。

 

お見本レシピのブレンドについて

3-10ペパーミント

同じフェノール類のオイゲノールを80%以上も含み、クローブよりもさらに刺激の強い成分構成をとっているシナモンとブレンドするのでは、クローブ80滴で使うよりマズい結果になってしまいますから、他のグループとの精油とブレンドすることになります。

スパイス系のクローブとの相性の良いのは、樹脂系か、樹木系になりますが、作用の目的は防カビですから、モノテルペンアルコール類の抗真菌作用が期待できるティーツリーを選ぶのがよいということになります。

ただ、クローブもティーツリーも、香りはかなりツンとした薬臭さがある匂いです。別系統の匂いを加えていくことで、香りに幅を持たせることができます。

ティーツリーと相性のよいハーブ系のなかに、抗真菌効果が期待できるペパーミントもあるので、これを交えると、抗真菌作用も保ったまま、香りの幅を広げることができます。

 

3-11グレープフルーツホワイト

オレンジスイートやグレープフルーツは、抗真菌作用は期待できませんが、高い抗菌作用や洗浄作用を持つので、掃除用の精油としては、非常に使用頻度が高いという特徴があります。

もちろん、抗真菌作用にこだわるのなら、柑橘系ではなく、抗真菌作用を持つ精油のなかでブレンドというレシピも作れます。

ただ、このレシピは、水周りのカビ対策が前提になっており、防カビ・スプレーを使ったあと、最終的にはスプレーを噴射した場所を洗い流すことになります。そのため、洗剤の成分としても使われてきた歴史がある柑橘系の精油が持つ成分リモネンの作用を取り入れるのも利があります。

なぜ、水周りの抗真菌が前提になっているのか分かるのかというと、精油の希釈濃度が4%だからです。
長くなりましたので、今回は、この辺りまでにしますが、次回は、精油の賦香率(希釈濃度)のお話からはじめたいと思います。

参考文献など

アロマティック・アルケミー Aromatic Alchemy―エッセンシャルオイルのブレンド教本

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